人生100年時代に、老後は2,000万円が必要と言われているが、本当に2,000万円で足りるのか?と不安になることが多々ある。
今の30代、40代は、老後を年金だけで賄えると思っている人は皆無だと思われる。
そのような世の中で、「資産形成・節税したいけど、何から始めればいいかわからない」という方に、真っ先におすすめしたいのが小規模企業共済です。
この記事では、小規模企業共済の基本的な仕組みから、加入時(入口)と受取時(出口)の税務メリットまでをわかりやすく解説します。
小規模企業共済とは?制度の基本を押さえよう
小規模企業共済は、国が運営する中小機構(中小企業基盤整備機構)の共済制度です。
個人事業主や中小企業の役員が廃業・退職した際に、退職金として共済金を受け取れる仕組みになっています。
誰が加入できるのか
加入できる方は以下のとおりです。
・常時使用する従業員が20人以下の個人事業主 ・常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の会社の役員 ・事業に従事する共同経営者(個人事業主の配偶者など)
フリーランスや一人社長の方も対象になります。
掛金はいくらから始められるのか
月額1,000円から70,000円の範囲で、500円単位で自由に設定できます。
年間の最大掛金は84万円(月7万円×12か月)です。途中で増額・減額の変更も可能なので、収入の変動に合わせて調整できます。
【入口のメリット】掛金が全額、所得控除になる
小規模企業共済の最大の魅力は、掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になることです。
所得控除の節税効果をシミュレーション
たとえば、年間所得が500万円の個人事業主が月5万円(年60万円)を掛けた場合を考えます。
所得税率が20%・住民税率が10%と仮定すると、節税額は以下のとおりです。
年間掛金:600,000円
| 所得税の節税額(税率20%) | 住民税の節税額(税率10%) | 年間節税合計 |
| 120,000円 | 60,000円 | 180,000円 |
実質的に、掛金60万円のうち18万円は税金の還付で戻ってくる計算です。
確定申告での手続きは?
確定申告の際に「小規模企業共済等掛金控除」の欄に掛金の合計額を記入するだけです。
中小機構から毎年送付される「払込証明書」を添付することで控除が適用されます。
【出口のメリット】受取時も税務上の優遇がある
積み立てた共済金を受け取る際にも、税務上の優遇措置があります。
受取方法は3種類
受取方法によって税務上の扱いが異なります。
・一括受取 → 退職所得として課税(税負担が軽い)
・分割受取(10年・15年) → 公的年金等の雑所得として課税
・一括+分割の併用 → 上記の組み合わせ
退職所得は税負担がとても軽い
一括受取の場合は「退職所得」として扱われます。退職所得は以下の計算式で課税対象額が大幅に圧縮されます。
退職所得 =(収入金額 ー 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額は加入年数が長いほど大きくなります。たとえば20年間加入していた場合、退職所得控除は800万円です。長期間積み立てるほど、受取時の税負担が少なくなる仕組みです。
注意:2026年より、過去10年以内に他の退職金・企業年金を受け取っている場合、退職所得控除額が減額調整される制度改正が施行されています。受取のタイミングによっては税負担が増える可能性があるため、事前に専門家へご確認ください。
注意すべき「出口」のリスクとは
任意解約は元本割れの可能性がある
・廃業・退職以外の任意解約の場合
掛金の納付月数によっては元本を下回ることがあります。
・掛金納付月数が240か月(20年)未満の任意解約
受取額が掛金合計を下回ります。
短期間での解約は損になるため、長期的に継続できる掛金額を設定することが大切です。
・12か月未満の掛金
共済金が受け取れない
・加入後12か月未満で廃業・解約した場合
共済金が受け取れません。加入するなら長期継続を前提に検討しましょう。
加入手続きの方法
窓口で加入する
中小機構と提携している以下の窓口で手続きができます。
・商工会・商工会議所 ・中小企業団体中央会 ・代理店となっている金融機関(銀行・信用金庫など)
書類の準備
個人事業主の場合は、確定申告書の写しや開業届の写しなどが必要です。窓口によって必要書類が異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
まとめ
・小規模企業共済は、掛金が全額所得控除になる強力な節税制度 ・月1,000円〜70,000円で始められ、途中変更も可能 ・受取時は退職所得として扱われ、税負担が軽い
・任意解約は元本割れの可能性があるため、長期継続が前提
・加入窓口は商工会・金融機関などで手続きできる
昨今いろんな老後のための貯蓄方法が紹介されていますが、昔から続いているこの小規模企業共済も老後の資産形成を進めたい方にとって、最優先で検討すべき制度のひとつです。
掛金の設定や受取時の税務対策について、ご不明な点はお気軽にSTARUP会計事務所へご相談ください。
本記事は情報提供を目的としており、個別の税務相談は税理士にご確認ください。
出典について
・小規模企業共済の加入等については、中小企業基盤整備機構の公式ページをご参照ください
・小規模企業共済等掛金控除については国税庁公式ページをご参照ください
この記事の著者
税理士 関 伸也(せき しんや)
東京都江戸川区西葛西を拠点に、中小企業・個人事業主の税務・会計をサポート。税務顧問・確定申告・節税対策・相続税・クラウド会計(freee対応)など幅広く対応。「税務を、一人で悩まない。」をモットーに、税理士が直接対応する地域密着型の会計事務所として2019年に開業。
